2014年5月6日火曜日

作家の楡周平氏への取材が

読者数は減ってない? 作家が“本の売れない理由”を語る」として掲載されておりますが、その中で、勤めていたコダックでデジタル化の提言をしたが、当時のビジネスモデルに固執するあまり、経営破綻したと書かれておりました。

間違いではないですが、先日読んだ、原田勉氏の「イノベーション戦略の論理」ではコダックとは反対に生き延びた富士フイルムを比較して次のように考察されており、そちらの方が本質を押さえている思いました。少々長いですが、引用します。

 富士フイルムがデジタルカメラの領域に進出していった事例は、同社にとってまったく未知の「飛び地」へと移行した例となる。銀塩フィルム事業がメインの企業にとって、デジタルカメラは未利用技術に相当する。このような飛び地への意向はリスクが大きく、失敗の確率も高いものである。しかし、富士フイルムは、2000年の最盛期には連絡売り上げの約9%を占めていた銀塩フィルムを代替することになるデジタルカメラの領域に先手をとって進出していった。
 あるいは、コア技術自体を進化させることで、新たな事業創造を行う場合もある。たとえば、富士フイルムが銀会陰フィルムで培ったコア技術を機能性材料に適用し、WV(ワイドビュー)フィルムやバリアーフィルム、導電性フィルムの領域で事業開発していった例がこれに相当する。同社が開発したスキンケア化粧品「アスタリフト」や機能性食品もまたコア技術の応用であった。一見すると、フィルムとスキンケア化粧品、機能性食品とは関連性がないように見えるかもしれない。しかし、実はフィルムはコラーゲン(タンパク質)から構成されており、コラーゲンの特性を知り、それを製品化する技術は、銀塩フィルム事業を通じて、同社に蓄積されていた。また、写真プリントの色褪せの原因は紫外線で発生する活性酸素による酸化にあり、この酸化を防ぐ研究も同社では行われていた。それらに微細粒子をコントロールするナノテクノロジーを加え、スキンケア化粧品や機能性食品を開発していったのである。
 一方、銀塩フィルムの領域でトップメーカーであった米イーストマン・コダックは、このような技術ダイナミクスを実現すること無く、2012年に経営破綻することとなった。富士フイルムの場合、デジタルカメラという飛び地へと進出することで機器を克服していったという印象が強いかもしれない。しかし、同社が生き残れた本当の理由は、むしろ、従来のコア技術であったフィルム関連技術を液晶や化粧品など新たな領域に応用し、市場を開拓していった点にある。つまり、銀塩フィルム事業がたとえなくなったとしても、フィルムが依然としてコア技術であると再定義したことが成功の要因だったのである。


コダックとしても、デジタル化への移行はハイリスクであり、そこから脱しきれないのは当然だと思います。組織が大きくなればなるほど急ハンドルは切れない。よっぽど経営者の情熱がなければ。理想論で急ハンドルを切るのではなく、自社が保有する技術の再定義をすることが肝要と言う原田氏の指摘は現実的な打開策なのだと思いました。

さらに楡氏は、本が売れなくなった理由として、みんながタダで本(情報)を借りようと図書館を使いまくるからだと論じています。

ちょっと強引な論理飛躍なような気もします。
確かに図書館は無料貸本屋という指摘も側面もありますが、図書館が仕入れる本は私たちの血税で購入されているわけでし、そもそも図書館なんて昔からあったから今に始まったことではないと思います。ネット通販やデジタル書籍で手にする敷居が低くなっているのに売れないのは、面白いかどうかが一番のポイントでは無いのでしょうか。売れてる本は売れてるし。極端な話、図書館が無くなれば本は売れるようになるの?というとそうでも無いように思います。実際、法律で音楽のダウンロードを規制しましたが、音楽の売り上げはさほど変わっていないようですしねー。

ちょっと違うなと思ったので、珍しく真面目な話を書いてしまいました。