2009年8月12日水曜日

瞬発力

「私も先輩のように行動力のある人になりたいです」

1週間ぶりに社内に戻り、社内の委員会の仕事をぴゃぴゃっと終わらせた私に対して放った、後輩ちゃんの言葉である。

瞬発力で結果を出す事はこれまで何度もやってきたので、ちょっとした行動を起こすのに苦はない。


一般的には、こんなことを言われて喜ばない人はいないだろう。

しかし、この日の私は、とても気持ちにはなれなかった。

朝、あんなことが起こらなければ。





いつも通り、同じ電車の定位置に着こうと、ドアの前、つまり行列の先頭を確保し、スタートラインに経った。

目標は、次の快速の次にくる中央特快である。

タッチの差で私の後ろには行列ができ始めていた。



事が起こったのはその時だ。

快速が到着し、何人かが下車していた。

隣の行列の人たちがなんだか騒いでいる。

特におばちゃん達。

どうやら、快速から降りて来た女性が倒れたようだ。

見た感じ、貧血を起こし、途中下車して倒れたというところだろうか。

周りのおばちゃん達が動き、一人が駅員を呼びに行った。

連れて来た駅員はふらふらとどこかへ行ってしまった。

「何やってるんだ?」と思っていたら中央特快が到着。

貧血の女性も立ち上がり、去ろうとしている。

うーん、なんか危険なにおいがする。

経験則だが、座ってて貧血が落ち着いても、立てるとぶり返す。

そうならないかなぁ、とちょっと目で追っていた。

彼女はエスカレーターに乗る。

エスカレーターの手すりに寄りかかる。

鞄をエレベーターの外側に落とす。

や、やべぇ。

もう意識ないじゃん。

ちょっと走り出そうか迷う。

ちょうど中央特快のドアは開いたからだ。

その一瞬の迷いの間に、おばちゃんは彼女の元へ走り出していた。

きっとおばちゃんがいるから大丈夫だろうと、自己弁護しながら電車に乗り込む。

資格試験の本を開くが全く頭に入らない。

何故、私は瞬間的に動けなかったのか?

仕事なんてそんな忙しいわけじゃないから、ちょっとぐらい遅れたって大丈夫じゃないか。

いつだってそうだ。

私は初動が一瞬遅れるのだ。


後輩ちゃんは勘違いしている。

実はそうじゃない。

本当の私はもっと臆病で言い訳が多いんだ。



人間らしいと言えばそうなんだが、そこに収まりたいとも思わない。

そんな思いを強く出来た1日だった。



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